【月1回やろう】革靴のお手入れ、靴磨きの基本的なやり方まとめ! 頻度や道具、手順を徹底解説

革靴・靴磨き
こひ(筆者)
こひ(筆者)
こんにちは、革靴伝道師として活動しているこひ先生(@k_leather_lover)です!

 

私は社内部活で始めた靴磨きが評判を呼び、幸いにも他社様に出向く機会をいただき出張靴磨きをしています。そこでの実践や学びを記事にしています。

・・・

近年スニーカーが台頭しているとはいえ、革靴を履くひとはまだまだ多い日本。

ただ手入れの仕方を知っている人はどれくらいいるのでしょうか。

私は永田町にオフィスがあり、長いエスカレーターに並ぶ出勤中のビジネスパーソンの足元をよく観察しています。

上記のような人は実際にはほんの一部。

ほとんどの人が革靴の手入れの習慣を知らないように見えます(実際に出張靴磨きへ行くと「無料と聞いてきました。普段は手入れしません」という人が多い)。

きっと正しい靴磨き道具の揃え方、磨き方、周辺知識があれば、どんな人でも革靴ライフを楽しめるはず。その思いを込めて革靴のお手入れ、靴磨きの基本の記事を作ってみました。

 

革靴のお手入れが必要な理由

まず本編に入る前に、なぜ「革靴はケアが必要」と口酸っぱく言われるのか考えていきます。

ここでは「モノを大事にしよう」「良いビジネスパーソンこそ足元を大事にする」といった精神的理由は一旦排除します。

まず前提として、靴は私たちの生活を足元から支えてくれる大変重要な存在です。

具体的な統計を例に出しましょう。人は歩くたびに体重のおよそ20%の衝撃が足にかかると言われており、60キロのひとが現代人の一日平均歩行距離6.5キロを歩いた場合に、一日540トンの負荷が靴に掛かる計算です。

そんな靴は日々泥やほこり、雨水にまみれ、また汗を吸収するため、放っておけば亀裂や変色、悪臭など内外からトラブルが生じます。

 

こひ(筆者)
こひ(筆者)
外を歩く、という行為がそもそも本来、タフなんですよね。

 

ここで「革靴」に話題を戻しましょう。

革製品は軽さや柔軟性、独特の風合いが持ち味ですが、革靴は革製品のなかでも「靴」という特性上、上記の負荷が大きいためより一層ケアが必要になるわけです。

●参考文献
・竹川圭『至高の靴職人:関信義ー手業とその継承に人生を捧げた男がいた』小学館, 2014年, P26.

 

「革靴のお手入れ」「靴磨き」の種類

一般的に日本語で「靴磨き」というと、靴の手入れと磨きの両方が含まれています。革靴愛好家の私は下記のように少し分解して考えています。

 

  1. 毎日の手入れ:帰宅後のほこり落としや雨汚れのケア
  2. シューケア:革に栄養を入れたり傷を隠したりするお手入れ
  3. シューシャイン:ワックスでつま先やコバを覆い、汚れ防止と光沢を与えるお手入れ
  4. その他:靴紐やアウトソール(靴底)、コバ(張り出している部分)など細部のお手入れ

 

今回は、革靴を大事にしていきたい方が最も知るべき「2. シューケア」にフォーカスします。

 

■関連記事:
【帰宅後1分間】超簡単、革靴のお手入れ習慣! 初心者から玄人まで実践すべきケア方法まとめ
【半年に一度の本格版】革靴のお手入れの:コバとソール、レース(靴紐)をチェックしよう

 

頻度:シューケアの理想的な回数は月1回でOK

季節や気候、革靴の状態に依りますが、理想として月1回のケアをおすすめします(※雨でびしょびしょになった場合などは都度週末には後述の方法で栄養補給してください)。

帰宅後に毎日の手入れでほこりや泥を落としラックに休ませていても、革の表面の水分や栄養は失われていきます。また、しみ込んだ汚れや汗で少しずつ負担が掛かっています。

 

こひ(筆者)
こひ(筆者)
靴の負荷は内側、外側、両方に掛かると言われています!

 

私は出張靴磨きで、それまで手入れを一切してこなかったビジネスパーソンの革靴をケアします。クリームを使わなかったために色が抜け、乾燥しきってぱりぱりになった革靴を何度も見てきました。

慣れれば一回15分程度で終わるので、月に一度を目安に、下記で紹介する汚れ落としやクリーム、ブラッシングを実践していただきたいです。

 

必要な道具はブラシとクリームなど下記5点セット

基本的に大手百貨店やホームセンターでひと通り買えますが、サイズや色、成分の違いが多く、悩まされます。

ここでは私のお気に入りを使って手入れの方法を紹介しますが、全く同じ商品でなくても大丈夫。役割・効用さえ一致すればよいので、あくまで参考にどうぞ。

商品のサイズや名前が異なっても役割が同じであればOK

 

  • 馬毛ブラシ:ほこり落とし。豚毛に比べて柔らかい
  • 布:汚れや余分なクリームをふき取るために使う巻き布
  • 汚れ落とし:いわゆるクリーナー。革を痛めにくい水性がおすすめ
  • 乳化性クリーム:同色、もしくは少し薄い色を選ぶ。補色保革効果
  • 豚毛ブラシ:余分なクリームを飛ばし、浸透させる道具。馬毛に比べてコシがある

 

それでは早速、上記5点を使ってシューケアをしていきます。

■関連記事:筆者が普段使う道具について
こひ先生の「出張靴磨き」とは? シューケア道具や工夫を大公開!

 

基本的な靴磨きの手順:5ステップ

先んじて説明すると下記です。

 

  1. 革表面のほこり、泥を飛ばす
  2. クリーナーで古いクリームや汚れを除去する
  3. クリームで補色、栄養を入れる
  4. ブラッシングで、クリームを浸透させる
  5. 余分なクリームを布で拭き取る

 

これらのステップを、前述した道具を使い分けて行います。また磨く革靴にはシワを伸ばすためにシューキーパーを入れてくださいね。

馬毛ブラシで表面のほこり、泥を飛ばす

馬毛ブラシは毛足が長く、コバにも柔軟に入っていく

まず毛足の長い馬毛ブラシを使って、革表面のほこりや汚れを飛ばしていきます。写真のようにコバの部分も念入りにやります。

裏っ反すと、ベロの付け根にほこりが溜まっていたりする

見落としがちですが、羽根の部分にもほこりが溜まりやすいので、広げてささっと飛ばしましょう。

 

こひ(筆者)
こひ(筆者)
空いている片手で広げて、ブラシを持った手で掻き出しましょう!

 

これはクリームを入れる前に表面を何もくっ付いてない状態にする目的があります。

ただそれだけではなく、シミやひび割れといった革靴の問題を事前に確認する目的も兼ねます。

汚れ落としを布に取り、汚れを取る

動画のように布を手に巻きつけて、汚れ落とし(クリーナー)を布表面に取ります。そこの湿った部分を革に当てて拭いていきます。

この時、あまりゴシゴシ力を入れる必要はありません。

本職の靴磨き職人さんは布をくるくると解いて、面をすぐ替えて綺麗に磨いていく

ちなみに、上記は私の指の跡が残った布です。二本の指が横にずれて行く様子が分かりますか?

大体クリーナーを使って汚れを落とすときは革靴を前後左右で4等分して、このように布の面を横に変えていき、きれいな面で革の古い汚れを取っていきます。

 

■関連記事:
靴磨き用の布って? おすすめのネル生地は、買うよりも自分で切ろう

乳化性クリームを塗布して栄養チャージ

ではさっそく、補色保革効果のあるクリームを使った工程に入っていきます。一回では大体このくらい取ります。

履きジワの入る部分に乗せていき伸ばしていきます。革が吸い取っていけば、同じようにクリームを取ってまた足していきます。

 

こひ(筆者)
こひ(筆者)
ちなみに指じゃなくても、布や専用(ペネトレイト)ブラシでもできますよ。

 

 ぶつかったり擦れたりする、かかとの部分もしっかりクリーム入れていきます。

補足:油性クリームも少量塗布して光沢チャージ

ちなみに私のこだわりを、補足として紹介します。

クリームには「乳化性」と「潤油性」がある別記事でもお伝えしました。後者は色の乗り方が強めだったり、光沢がよく出るため、量のコントロールが難しいです。

そのため、あくまで少しだけ入れる「隠し味」として、上記ぐらいの少量を、光らせたい甲やコバ上のラインにかけて塗ります。クレム1925は本当によく光りますね。

 

■関連記事:乳化性・油性クリームの違いやおすすめについて
結局何で革靴を磨くべき? 乳化性と油性クリーム(靴墨)の違いまとめ

豚毛ブラシで少々力を入れて磨く

それでは塗布したクリームを浸透させる工程です。馬毛ブラシの時よりもコシのある豚毛ブラシを持ちます。

利き手でブラシをガシっと掴んだら、片方の手で靴を傾け、ストロークしやすいようにします。馬毛ブラシのほこり落としよりも、少し力を入れてブラッシングしていきます。

基本を縦長の靴に対して縦にブラッシングしますが、甲のシワの部分は横にしてササっと掛けていきます。

 

■関連記事:私の過去に使ってきたお気に入りのブラシについて
おすすめの革靴用ブラシ6選! 使い分けから選び方、使い心地を徹底レビュー

布のきれいな面で、最後に仕上げ磨き

ブラッシングが終わって艶が出始めますが、まだ終わらせません。最後に余分なクリームをふき取る工程があります。

 

こひ(筆者)
こひ(筆者)
忘れられがちですが、超重要なので、ぜひやってくださいね!!

 

布の白いきれいな面を巻きつけて、革靴全体を円をかくように拭いていきます。

さんざんブラッシングしても、実はこんなに汚れが取れちゃうものなんです。

そのままにしていたら、表面にぺたぺたほこりやゴミが付いたりして大変なので、この仕上げは忘れない様にしましょう。

 

ビフォーアフター:磨いたらどんな感じか

ビフォー

つま先。鏡面磨きに小傷が目立って、剥げていました。

コバまわりもボロボロで、甲の付近も細かい汚れが目立っていました。

アフター

クリームを入れたおかげで小傷は消え、光沢が蘇りました。多少の雨も弾いてくれそうです。

注目していただきたいのは輪郭がはっきりした点です。乳化性、油性クリームを塗ってブラッシングするとアッパー全体の形がはっきりしますね。

おまけ:先っちょを鏡面磨きしておいた

「3. シューシャイン」もやってみました。つま先にワックスを塗ったことで、立体感が出てきました。

つま先は何もしないと削れたり剥げたりしてくる部分なので、ワックスで覆うことで傷を予防したり隠したりできます。別の記事で紹介しますので、ぜひお楽しみに。

 

補足:新品の革靴にはお手入れは必要?

こちらは補足ですが、買ったばかりの革靴にも「プレメンテ」という履きおろし前の準備が必要です。

デリケートクリームを使って店内で乾燥したアッパー(=足を通す革の部分全体)を保湿したり、好みによってつま先に金具を取り付けて削れるのを未然に防いだりケアが必要なんです。

枝葉末節なテーマなので本記事では詳細には触れないようにします。気になる方はどうぞ下のリンクから飛んでみてください。

 

■関連記事:
新品の革靴を買ってまず初めにすべきことまとめ:プレメンテから道具の準備、履き皺、スチール等

 

●参考文献
・長谷川裕也『靴磨きの本』亜紀書房, 2016年, P20-41
・飯野高広『紳士靴を嗜む:はじめの一歩から極めるまで』朝日新聞出版, 2010年, P162-169

まとめ

参考になりましたか? 今回の革靴のお手入れの仕方、靴磨きの基本をまとめると下記になります。

  • 革靴はひとの持ち物の中でも重圧や汗、泥、ほこりなど負担が掛かるため、ケアが重要である
  • 革靴のお手入れには大きく分けて【シューケア】と【シューシャイン】が存在する
  • 【シューケア】にフォーカスすると、馬毛ブラシ、布、汚れ落とし、乳化性クリーム、豚毛ブラシがあればひと通りお手入れできる

 

以上となります。この記事を読んでくださった方のなかから一人でも革靴のお手入れに興味が出てくる人が増えてくれればと思います。

何か気になることがあればいつでも私のTwitterアカウント(@k_leather_lover)にご連絡いただければ幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました!

コメント

タイトルとURLをコピーしました