当方、社内部活で始めた靴磨きが評判を呼び、幸いにも他社様に出向く機会をいただき出張靴磨きをしています。
そこでは販売員時代の経験や自分の学びを、革靴ファンと素人の橋渡しの目線で共有しています。
社内外の活動でよく聞かれる質問「靴磨き、靴の手入れってどれくらいの頻度でおこなうのか?」について、3本立てのシリーズ記事にしました。
今回は【半年に一度の本格版】と称し、通常よりも細かい手入れについて説明していきます!
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そもそもなぜ革靴のお手入れが必要なのか
まず前提として、私たちの生活を文字通り足元から支えてくれる靴の役割は極めて重要です。
人は歩くたびに体重のおよそ20%の衝撃が足にかかると言われており、60キロのひとが現代人の一日平均歩行距離6.5キロを歩いた場合には、デイリー540トンの負荷が靴に掛かってきます。
そんな靴は日々泥やほこり、雨水にまみれ、また汗を吸収するため、放っておけば内外から痛みが生じてダメになってしまいます。
ここで「靴」から「革靴」に話を移します。革製品は軽さや柔軟性、独特の風合いが持ち味ですが、革靴は革製品のなかでも「靴」という特性上、上記した負荷が多いため特にケアが必要になるわけです。
・竹川圭『至高の靴職人:関信義ー手業とその継承に人生を捧げた男がいた』小学館, 2014年, P26.
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私は毎日帰宅後のケアとして【乾拭き】【泥落とし】の方法、また毎月の基本的な手入れの流れ【シューケア】【シューシャイン】の方法をまとめてきました。
今回は番外編で革靴の見た目をより綺麗に、より歩行を快適にするため【シューレース】【コバ】【アウトソール】について(ややマニアックですが)解説していきます!
シューレース(靴紐)の交換
私は出張靴磨きをしていて、10人にひとりの割合でアドバイスするのは「靴紐を交換しましょう」です。
意外な盲点かもしれませんが、靴紐はボロボロになると毛羽立ち、色がしらっちゃけてきます。
また靴の先端の金具やテープ(セル加工といいます)が踏まれてひしゃげていたり取れていたりすると、見た目も悪い上に脱ぎ履きするとき紐の調整に時間が掛かります。
なので、半年に一度を目途に思い切って交換することをおすすめします。 主要な靴紐の種類は大きく分けて下記三種類。
- 平紐:ほどけにくくフィット感も高いが、若干カジュアルに見える
- 丸紐:耐久性が高く長時間の歩行に優しい反面、ほどけやすい
- 編み紐:非常に丈夫でほどけにくいが、ブーツのようなカジュアルさが出る
コバ(靴の出っ張り部分)のケア ※レザーの場合
次にコバです。こちらは【レザーソール】の手入れの場合だと思ってください。
コバやアウトソール(靴底)について木製だと思っている方がたまにいますが、ほとんどの場合は【レザー(革)】でできています。
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まず使う道具はこちらです。
- 紙ヤスリ(400番、1000番)
- 革コバリキッド
- ワックス
- デリケートクリーム
- 竹ブラシ
全体をざっくり説明すると、コバは歩行時の障害物との衝突に引き受けてくれる存在で、表面がボロボロになりがちです。
そのため傷や凹みをヤスリで平にして、色を足し、ワックスで埋めて均す作業をします。
2種類のヤスリで均す
適当なサイズに切った紙ヤスリを、目の粗い400番から使ってコバ表面を薄く削っていきます。特にぶつかった痕やえぐれてた部分を軽く均す気持ちでやります。
その後に目の細かい1000番でヤスリがけして表面を滑らかにします。この工程はざっくり2~3分で済みます。
指触りが良くなる頃には、大体表面の塗料が削れてこんな感じになります。
革コバリキッドで補色する
次に塗料が剥げた部分にコバ専用の塗料を塗っていきます。
成分的に油性マジックペンで済ませるやり方もあるみたいですが、私はこちらが塗りやすかったので採用しています。
少し乾かした後で、アッパーにクリームを塗るとき同様、余分な塗料を布で拭きとります。この時点で表面がつるつるして色は入ってきたのが分かりますね。
ワックスでコバ表面を覆い、布で擦る
次にワックスを塗布して仕上げに入ります。
突然ですが皆さん、買ったばかりの革靴を想像してみてください。
輪郭がしっかり浮き出て輝いていると思います。それはアッパーはもちろんまでもコバが色を失わずに発色しているためです。
手にひとなでほどのワックスを取り、先ほど滑らかにしたコバに層を作るように刷り込みます。
そこまで厚塗りする必要はなく、二、三層重ねたときには、凹凸がだいぶ減ってくるのが分かるはずです。
最後に布を指に巻き、ちょっと力を入れてワックス層をこすります。2分ほど摩擦していると艶が出てきますよ。
補足:縫い糸もデリケートクリームで保湿
最後に、盲点になりやすいのでステッチ(縫い糸)の部分のケアです。
グッドイヤー・ウェルテッド製法は出し縫いの糸がコバから見える設計ですが、降雨時にそこから雨水が侵入しやすいと言われています。そのため防水性を高める処置をします。
そこでほこりを軽くとった後に、デリケートクリームを竹ブラシで掬い取って、塗っていきます。
意外にも乾燥していたのか、クリームのロウ分と水分を吸い取り糸の色がだいぶ濃くなっていきました。
鏡面磨き割れのような緊急性はありませんが、地味に重要な作業なので【補足】としました。
アウトソール(靴底)のケア ※レザーの場合
最後にソールのケアです。こちらはケアしないとソールの消耗が激しくなり、オールソール(リソール、ソールの全取り換え)までの寿命に響くと言われています。必要なものは下記2点です。
- ステインリムーバー(要はアッパーに使う汚れ落とし)
- ミンクオイルやソールモイスチャライザー
作業の流れはアウトソール表面の汚れを取り、革表面(ソールは木ではないですよ)に適度なロウ分を入れて、圧をかけて毛羽立ちを押さえて引き締めます。
前提として、レザーソールのケア範囲は写真でとったこの部分でOK! 踵はそもそも削れるのが当然の部分でキリがなく、土踏まず部分は逆にほとんど削れずケアしてもほぼ関係ありません。
では早速、汚れを取り除くため、爪二つ分くらいのステインリムーバーを指に巻いた布に垂らしましょう(ステインリムーバーはモゥブレイでもブートブラックでも大丈夫です、両方実験済み)。
擦った部分は当然革なので水分を吸って濃くなりますが、気にせず、必要に応じて布の面を替えながら全面的に汚れを取っていきます。
次にロウ分のチャージです。見てのとおり、そこまで大量には付ける必要はありません。
私はソールモイスチャライザーを買う前にミンクオイルを使い切りたいためこちらを使います。要領は綺麗にした底面に擦り入れるだけで同じなのですが。
円を描くようにゴシゴシ刷り込んでいくと、徐々に表面が色濃くなっていきます。
この段階で終わったら1分程度乾かします。
ソール表面がしっとりしてきたところで、毛羽立ちを寝かしつけます。
最後に、カッサ棒かビンの淵(要は鋭利ではない硬さのある物質)に布を巻き、ロウ分を足した革表面に「縦線を入れていく」ようなイメージでこすっていきます。
2分程度作業していると、だいぶ引き締まって光を反射するほどになりました。
並べて見ると違いは歴然。ボサボサに毛羽立った左足と、元の革色を取り戻した右足とで明暗が分かれましたね。
まとめ
参考になりましたか? 以上が【シューレース】【コバ】【アウトソール】について半年に一度はやりたい本格ケアでした!
意外に、本当に、忘れがちなんですが、紐変えたりコバ色塗るだけ・細かい手入れするだけで見違えるんですよ。それを少しでも体感していただければ幸いです。
それではまた最後までお読みいただきありがとうございました。