こんにちは、革靴伝道師として活動しているこひ先生(k_leather_lover)です!
革靴の工場見学はたまに行くけど、靴クリームの工場見学は行ったことないな。
そう思って知り合いの伝手をいろいろと尋ね回っていたところ(迷惑w)、コロンブスの工場見学に行けることになりました。
今回は特にクリームの原材料や製造工程について深ぼっていきます。普段触っている靴クリームは何がどのように製造されているのか、マニアックな内容ですがお付き合いください!
株式会社コロンブスとは
株式会社コロンブスは日本を代表する靴用品メーカーです。クリームやワックスはもちろんインソールなど幅広く扱っており、製品は国内外に出荷されます。
国内では全国の革靴メーカー直営店や靴磨き店、小売店に卸され、私個人も販売員時代から売り手としても親しみのあるブランドです。
また買い手としても、靴磨きで愛用する「ブートブラックシリーズ」や雨の日に役立つ防水スプレー「アメダス」など同社の製品にはお世話になりっぱなしです。
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今回はそんな同社の千葉県は松戸市にある工場にお邪魔しました。この工場だけで年間450万個のクリームを生産するそうです。
JR常磐線「北松戸」駅から徒歩10分に位置します。
クリーム作り①:原材料の調合について
まずはクリームの原材料についてお話を聞きしました。
定義について:乳化性クリームと油性クリーム
ここでそもそも前提の話に入ります。私たち生活者は靴磨きをするとき、ビンやチューブタイプの商品を「クリーム」、缶に入った商品を「ワックス」と言い表しますよね。
でも販売元として正確な定義では、実は両方ともクリーム。前者は「乳化性クリーム」で後者は「油性クリーム」だそうです。ダイソーのワックスも缶の表面に「クリーム」って書いてありますが、あながち間違いではないんですね。
また「乳化性クリーム」には二種類の区別があり、水のなかに油脂やワックス、とろみ成分の乳化剤が入った「O/W型」と、油のなかに水やワックス、乳化剤の入った「W/O型(潤油性ともいう)」があります。
ただ、この乳化性クリームの違いは難しく考える必要はなさそうです。触り心地で判別がつくからです。身近なところで牛乳とマヨネーズの関係、靴磨きで言えばブートブラックとクレム1925の関係だと個人的に解釈しています。
■関連記事:
結局何で革靴を磨くべき? 乳化性と油性、潤油性クリーム(靴墨)の違いまとめ
植物性、動物性…さまざまなワックス
話がやや前後しますが、靴磨きのクリームには「水、ワックス(ロウ)、油脂(有機溶剤を含む)」に乳化剤が配合されています。
なかでも、光を出すためのロウ分には種類が多いです。製品特性や仕入れの状況に応じて、配合を変えて品質を保つそうです。早速見ていきましょう。
おっ!!!
これは植物性ワックスの代表格、本でよく見る「カルナバワックス」の原材料です。カルナバはブラジルなど温帯地域で育つヤシの種類で、新芽からでる乾燥防止の潤い成分を採取しているのだとか。
新芽の状態で採るワックスが最も透明度が高い。右から左に濃くなり一号、二号、三号と進むのは、どんどん育っていくからだそうです。
拳二つ分くらいの塊。これ、結構重いですw
両方ともキラキラと光ります。でもこの状態では、ベタベタした感じは全くありません。
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次に動物性のワックス(=ロウ)も触らせてもらいました。虫の分泌する成分からできた「イボタロウ」ワックスや、羊の毛根から採取する「ラノリン」などたくさん種類がありました。
今回、手に取れたのはハチミツから採れる「ミツロウ」です。
おおーーーー!! これ、さっきのカルナバワックスに比べて超フニフニしてます(笑)! 柔軟性を出すために必要な成分だそうです。うーん納得。
他にも石油系や化学系などのワックスが展示されました。ひとくくりに「ロウ」と書いてあっても、裏ではこれらが調合されているんですね。
クリーム作り②:品質担保のための検品について
次に品質担保のための同社の取り組みを見せていただきました。人肌や皮革製品に触れるし、色味が関わるため、専門の研究スタッフを配置してガッツリ検査していました。
ペーハーなんて見たの中学ぶりかも。酸やアルカリが強すぎて有害だと手に取って使えませんからね……!
こちらは照り具合を確かめる装置。光を当ててどれくらい光量が返ってくるのか見ているそうです。ワクワクする。
こちらは日光を再現して色味を確かめる装置。やはり同じ基準で観ないと分からないですものね。
コロンブスさんでは、クリームを入れた革製品が屈曲や摩擦に耐えられるかチェックする機械がある。
やっぱり製造業はこうした品質チェックが大事なんですね。 pic.twitter.com/1djWNIFdRT
— こひ先生 @革靴伝道師 (@k_leather_lover) 2019年6月11日
他にも色差計や摩擦・屈曲させても色落ちしないかチェックする機器などがたくさんあり、同社の製品と向き合う姿勢がうかがえました!
クリーム作り③:見た目をこだわった二度注ぎや包装
後半は実際に工場の製造現場を見せていただきました。
私が思うに同社が特にこだわっているのは製品の充填でした。想像してみて欲しいのですが、コロンブスのクリームって、蓋をひねって開けると淵いっぱいまで入ってますよね。
実は出来立てで熱々のクリームは蒸発して量(かさ)が沈みやすいため、二度に分けて注いでいるらしいんです! 生産量が特に多いものは機械で。小ロットで作るものは人の手で入れているそう。
https://columbus.co.jp/labo/index.html
たまたま現場を見れました。上記のイメージ通り、お手製の漏斗を上手くコントロールしてひとつずつ充填していましたよ。
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また他にも、ビン詰めした製品のキャップの向きと包装テープの向きを揃えるために手作業が入るなど、見た目へのこだわりが非常に感じられました。
まとめ
革靴好き、靴磨き好きには知らない人がいないほど、最大手かつ老舗のコロンブス。今回は同社工場に潜入し、原材料や製造工程のこだわり学んできました。
- コロンブス松戸工場では年間450万個のクリームを製造している
- クリームには油性、乳化性の区別があり、乳化性クリームには水ベースと油ベースのものがある
- ワックスは植物性、動物性のほか様々なタイプを調合して作られる
- コロンブスのクリームは特に充填や包装の見た目にこだわりが見られた
お楽しみいただけましたか? ぜひご興味があれば工場見学に行ってみてくださいね。