【データ編】革靴業界の市場分析してみた! 日本経済から主要企業IR情報まとめ

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こんにちは、革靴伝道師として活動しているこひ先生(@k_leather_lover)です!

「日本の景気は徐々に良くなっている!」「オリンピック特需もある!」

私たちは日々色々な情報に触れています。意識してもしなくても、正しい正しくないを咀嚼することもなく、テレビやラジオ、雑誌が発信した情報に影響されがちです。

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最近、私は革靴メーカー関係者とお話する機会が増えてきました。

彼らの課題を聞いているうちに「ちゃんとデータを見て話せるようにしなきゃ」と焦るようになりました(私は一介のIT企業社員であり、製造業経験はない)。

そこで今回、私が提案資料を作るときにも参考にしている日本国内の革靴メーカー関連のデータを集めました!

少々マクロな視点ですが、日本経済の基本情報から説明できればと思います。業界関係者の方、課題感を確かめたい方、どうぞご覧ください。

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※補足:本記事は【市場データ編】と【消費者動向編】で二つに分かれます。それぞれ定量・定性的な説明をしたいためです。こちらは前者【市場データ編】になります。

 

前提:革靴メーカーの課題を経済から分解する

「国内の革靴は年々売れなくなった、出荷数が減ったよ!」と分析してまとめるのは簡単です。

ただ、当たり前ですが、市場は需要と供給で成り立っているため買い手(消費者・生活者)と売り手(メーカー、小売など)の両面から原因と結果を見ていく必要があります。

例えば、仮に「作り過ぎてモノが売れない」という場合に、「メーカー都合で大量に生産した」のか「生活者の可処分所得が減少しお金を落とさなくなった」のでは、

一見して【需要予測が甘い】という同じ失敗でも、意味合いが異なり対応策を見誤ります。複眼的に原因を見ていかないといけないわけです。

そこで今回の記事の構成は下記のように、順を追ってまとめます。

 

・買い手視点:国内の経済、市場規模のデータ

・売り手視点:国内の紳士靴・履物メーカーのデータ

 

前置きが長くなってしまいましたね、すみません。それでは見ていきましょう!

 

日本国内の経済、市場規模のデータ

日本の人口動態の今と未来

日本における2020年と2025年の人口動態をまとめてみました。日本は超少子高齢化です。特に2020年以降、その流れが加速します。

人口ボリュームの最も多い箇所に黄色枠を付けました。2020年の40代が、5年後には(当然ですが)加齢により50代にシフトしてきます。

一般的に40代は最も消費が活発な人たちです。働き盛りで可処分所得にある程度余裕があり、子供がいて、趣味もあって。経済をガンガン回してくれる市場に必要な年齢層です。

そうなると「次の40代は?」という話になりますが、少子化で2025年以降、どんどん先細り。

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つまり、これからの日本経済の未来は、それまで最も活発で厚みのあった消費層が居なくなっていき、肝心な次世代の人口が少ない、冷えっ冷えな状況です。

(若い世代はおじいさん、おばあさんを介護するために仕事を休む? そうなれば革靴どころか生活水準の維持に可処分所得が持っていかれるなんてことも……)

 

参考:
https://www.populationpyramid.net/ja/%E6%97%A5%E6%9C%AC/2020/
https://www.populationpyramid.net/ja/%E6%97%A5%E6%9C%AC/2025/

日本の高卒・大卒初任給の平均額

過去5年の高卒、大卒初任給をまとめてみました。

単位=千円高卒:男高卒:女大卒:男大卒:女
2014年161.3154.2202.9197.2
2015年163.4156.2204.5198.8
2016年163.5157.2205.9200
2017年164.2158.4207.8204.1
2018年166.6162.3210.1202.6
平均163.8157.66206.24200.54

20万円をちょっと超えるみたいです。ただ平均であり中央値ではないです。地方はちょっと厳しそう。

 

参考:
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/shuyo/0303.html

日本の家計の可処分所得

今度は過去5年の勤労者世帯(二人以上の世帯)における可処分所得をまとめました。上記の高卒、大卒とは少し違います。

可処分所得とは、要するに税金や社会保障費を抜いた「手取り」収入のことですね。

 勤労者世帯(二人以上の世帯)
単位=円実収入可処分所得
2013年523,589426,132
2014年519,761423,541
2015年525,669427,270
2016年526,973428,697
2017年533,820434,415
平均525,962428,011

例えば両親共働きで、子供が二人いた場合、車や住宅のローン、ガス・水道代などの生活費、幼稚園とか小学校の諸費が引かれるので、旦那さんが月々使えるお金って幾らになるんだろう。。。

 

参考:
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/shuyo/0601.html

日本国内の紳士靴・履物メーカーのデータ

紳士靴・履物の市場規模(2015年)

矢野経済研究所さんの統計から、紳士靴・履物(スニーカー等含むため注意)の市場規模のデータをご紹介します。

単位=億円

予測込みで見てみると、直近3年では毎年250億円の微減傾向。ちなみに同資料には紳士靴市場に関する考察もあるので、ちょっと引用します。

 

紳士靴市場

2015 年度の紳士靴小売市場規模は前年度比 98.2%の 2,220 億円であった。2016 年度は同 92.3%の2,050 億円と縮小基調を予測する。紳士靴市場の主な縮小要因は、10 年ほど前から環境対策を目的としたオフィスの軽装化(クールビズ/ウォームビズ)が定着したことにある。

これにより、ドレス・ビジネスシューズを着用する機会が大幅に減少したことが需要の低迷を招いたとみる。こうした需要の一部はカジュアルスニーカーに移行しているものとみられ、紳士靴市場は厳しい状況が続いている。

(株式会社矢野経済研究所、 2016年)

 

やはり統計のプロは「革靴対スニーカー」の二項対立を指摘していますね。とはいえ、このデータだけでは「スニーカーの伸び具合と革靴の停滞具合」が具体的に分からないです。

 

参考:
https://www.yano.co.jp/press/download.php/001649

 

紳士靴の出荷数推移

革靴単体の出荷数は2000年代から右肩下がりです。

 

参考:
https://newspicks.com/industry/SPD1U1BO5JHXOV3J?fragment=view&index=0&regionId=JPN&t=chart

靴専門メーカーの売上高上位5位

トップのエービーシー・マートは「靴の商社」といったイメージ。国内外で大きな販路を持ち売上を上げています。主力はレザーカジュアル、ビジネスではなくスニーカー。

各主要メーカーの課題については後述します。

 

参考:
https://newspicks.com/industry/SPD00XSW1PSU4G3P?fragment=view&index=0&regionId=JPN&t=chart

主要革靴小売・メーカーの課題感(決算資料より)

国内の主要な革靴小売業、メーカーの決算資料から、どこに経営課題を感じているのか読み解きます。

株式会社エービーシー・マート

人手不足とネット通販のシェア争いなどから、設備投資の増加、特にIT投資が急激に拡大してまいりました。国内消費におきましては、ネットの急成長による小売のサービス競争が過熱してきており、オムニチャネル戦略の強化が必要不可欠になってきております。

シューズ業界におきましては、企業の働き方改革の推進によるオフィスのカジュアル化や健康志向の拡大により、引き続きスニーカーを中心としたカジュアル志向のスポーツシューズの需要が拡大しております。

株式会社エービーシー・マート、平成31年2月期 第3四半期決算短信

 

そもそもエービーシー・マートでは「ホーキンス」といったカジュアルなレザーシューズや「VANZ」といったスニーカーの展開も豊富。

革靴は同社の製品ポートフォリオのあくまで一つなので、カジュアル志向やスポーツシューズ需要には比較的柔軟に対応できそうです。

ちなみに「オムニチャネル」というのはデジタルマーケティングの用語で、店舗とネット、オンライン・オフライン両方で買い物できる包括的な消費体験を指します。手堅くネットにも力を入れているんですね。

 

参考:
http://www.abc-mart.co.jp/ir/pdf/2019/kessan03.pdf

株式会社チヨダ

・カジュアル化の進行 (⇒履き心地重視へ)
・女性の社会進出拡大 (⇒女性ニーズの多様化)
・コモディティ化の進行 (⇒低価格需要の拡大)
・都市と地方の格差拡大 (⇒郊外の出店減少)

・EC市場の拡大
・商品情報入手、手段の多様化

・衣料品チェーンの低価格靴販売強化
・スポーツとの垣根が低くなる

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店舗では、今期の重点施策であるブランドごとの売場表現方法の見直しを行い、健康や通勤といったテーマやシーン別の提案強化に積極的に取り組んでまいりました。

また、スニーカーのアウトレットコーナーやキッズパークの設置を進めるなど、計107店舗の改装を実施いたしました。これらの効果により、消費者のニーズが高まっている軽量性や屈曲性に優れたタウンユーススニーカーの販売が伸長しました。

また、EC事業の強化にも引き続き取り組み、販売サイトのマルチチャネル戦略の推進などにより、販売額が前年同期比38%増となりました。あわせて、オンラインショップで商品を選び、希望の店舗で受け取ることが出来るサービスの拡大により、店舗への送客も強化いたしました。

 

株式会社チヨダ、2019年2月期 第2四半期決算説明会 スライド資料・四半期報告書(第72期第3四半期)

 

なぜ「履き心地重視」の傾向が増えているのか具体的な情報が紹介されておらず少々残念でしたが、今回の記事のなかでも最も製造業者としてのプロダクト改善の詳細案が盛り込まれている資料でした。

チヨダさんはエービーシー・マート同様、革靴中心のメーカーではなく、カジュアル靴もガンガン販売しているので、商品企画やVMD(店舗での商品の見せ方)を工夫して需要に対応するのでしょう。

ECやオムニチャネル(マルチチャネル)というIT化は今後も業界全体でどんどん進むでしょうね。

 

参考:
https://www.chiyodagrp.co.jp/ir/presentation/2019_half_slide.pdfhttps://www.chiyodagrp.co.jp/ir/presentation/2019_half_factbook.pdfhttps://www.chiyodagrp.co.jp/ir/financial_report.html

 

株式会社ジーフット

物販業界における個人消費については、急速に進む少子高齢化を背景に、消費構造そのものが大きな転換期を迎えています。具体的にはコト消費の躍進Eコマースの続伸、CtoC(個人間取引)ビジネスの台頭などにより、消費チャネルが大きく変化しています。

また上記を背景として靴小売業界においても、実需型消費の縮小、他業種からの参入などにより、競争はますます激化し経営環境は厳しさを増しております。

株式会社ジーフット、 2019年2月期 第3四半期決算短信

 

ジーフットでも少子高齢化にくわえ、「消費構造そのものが大きな転換期を迎えている」として生活者の買い物やその価値観の変化を指摘しています。

「コト消費」、「Eコマース」、「CtoC(個人間取引)ビジネス」というワードも出てきましたね。

「コト消費」とは、プロダクト(=モノ)をつうじて得られる体験に価値が見出される消費を指します。例えば、あなたがカメラを買う場合、本体の質だけではなく、フォトウォークという体験型イベントや、子供の笑顔が詰まったアルバムを祖父母にプレゼントするという思い出に対して、消費者はお金を落とすようになった、ということです。

「CtoCビジネス」はヤフオク、メルカリのような消費者間の電子商取引のこと。いわゆる、シェアリングエコノミーの一部ですね。要するに、新品買うより、新中古や使い古しを他の誰か(お店ではない)から安く買っちゃおうということです。

国内は買い手も少なくなり、売り手のライバルも多いので「激化」は間違いないでしょう。

 

参考:
http://file.swcms.net/file/g-foot-ir/dam/jcr:3e37ea27-4523-48d6-a32a-656d3fa42c62/140120181212448618.pdf

 

株式会社リーガルコーポレーション

靴業界におきましては、消費者の節約志向や低価格志向が継続するなか、スニーカーやスポーツシューズ需要が依然として根強く、婦人靴やレザーカジュアルが苦戦しております。また、「モノ消費」から「コト消費」へのシフトやEコマースの急成長による競争の激化等、消費の構造変化が顕著になっており、厳しい経営環境が続いております。

このような環境のなか、当社グループは、靴小売事業を核とした製造小売型企業体への進展を目指し、企画・開発から製造、調達、販売まで各部門がスピード感をもって連携することによって効率化を図るとともに、顧客ニーズやライフスタイルの変化に対応した店舗開発や商品提案を行い、新たなマーケットを創造していくことを重点課題として取り組んでまいりました。

株式会社リーガルコーポレーション、「2018年3月期 報告書」

 

革靴メーカー最大手のリーガルも、やはりスニーカーやスポーツシューズ需要に苦戦しています。もちろん、同社にもカジュアルラインはあるんですが、それを買いにリーガルにあまり行かないですね。「リーガル=革靴」(むしろ”革靴=リーガル”の人も多い)の認知がいっているはず。

また、「消費の構造変化が顕著」という言葉で、コト消費とオンラインショッピングを取り上げていますね。ここはジーフット社とも重複しています。リーガルは革靴メーカーとして、生活者の購入後にどんな使用価値を付加できるか注目したいです。

ちなみに「製造小売」業とはユニクロやJINSのように、自社で一環して企画して製造、販売まで行うことを指します。

 

参考:
https://www.regal.co.jp/shoes/c/c9004/detail/11?attach=true&fld=file&browserview=true

 

まとめ

参考になりましたか? 生活者視点から、企業視点まで思いっきりまとめてみました。今回の記事を要約すると下記です。

 

  • そもそも日本国内の消費は2020以降、少子高齢化の影響で停滞する
  • 現時点で紳士靴の出荷台数は低下傾向にある
  • 靴を扱う主要各社は小売もメーカーもEC化やスニーカー、カジュアル志向に対応すべき努力している
  • 国内は買い手の数が少なくなる一方、売り手の数が依然として変わらない(むしろ他業種参入もあり増えている?)

 

革靴業界のデータがあったら加筆修正していくので、振り替えるために保存していただければ幸いです。ありがとうございました!

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