先日、人生で初めて名古屋に来ました。モノ作りの愛知県にて、マドラスの本社工場にお呼びいただき、革靴の生産工程を取材してきました。
今回は自分のオーダーした革靴が作られる様子が見られる激熱な取材でした。
皆さんがいつも履いている革靴の構造が分かるように、徹底解説しましたので、お楽しみください。
おさらい:マドラスのカスタムオーダー「MOSS」
MOSS(Madras Order Shoes System)とは
MOSSとはマドラスが提供するカスタムオーダーのサービスで、東京では銀座店、八重洲店でお受けできます。
革の種類、靴のデザイン、色、トゥの形、ソールなど自分好みのアレンジが可能。
そして外せない特徴は計測によるフィッティング。店員さんが丁寧に足を測って木型を選び、仮止め時に修正を加えて、使う人にぴったりの形に合わせてくれます。
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見学先はマドラス本社工場(愛知県)
今回、やや強引に頼み込んでマドラスさんの工場に乗り込むことができました!
愛知県は丹羽郡大口町。名古屋鉄道犬山線「柏森駅」に下車し、そこから車で15分ほどのところにあります。
革靴が出来上がるまでの工程
これまでの進捗:素材そのまま
初回の計測が終わり、仮止めが上がってきて再計しました。
あくまでフィッティングをチェックするのが目的のためコバは張り出したままで、染料はまだ塗布されておりません。
この時点でも、革質の良さやパーフォレーション(穴飾り模様)のきれいさにノックアウトされてしまい「もう待ちきれないので、そのまま持ち帰って良いですか?」と聞いたんです。
すると「フィッティングと染色のため工場での作業が必要」とのことでスタッフさんに断られました。悔しい。
革靴作りの工程について
今回は上記の革靴の仕上げの前に、そもそも革靴がどう形作られるのかを見聞きしてきました。
革靴は大きく二つのパーツ「アッパー(写真左側)」と「ソール(写真中央~右側)」に分かれており、それぞれを糊と縫い糸で合体させて完成です。
この章ではその合体までの工程を【裁断、縫製、底付け、吊り込み、仕上げ】という5ステップに分けて紹介していきます。
裁断
私の行ったマドラスさんでは日本産、イタリア産の革を仕入れています。
もうね、作業場に革の匂いがしててたまらないんです(笑)。秘密基地を潜り抜けていく感じが心地良いんです。
「裁断」というからには革を切り出すわけです。このような金型を使って大きな革のシートから切り抜くやり方もあるのですが、今回はびっくり。
ファ!? CAD(コンピューターに支えれた設計)で映し出してポチポチしていきます。意外と理系だった。
すると、手前の機械がプスプスと線を引くように切っていくんです。
また、革表面にある傷を避けながらポインタで映し出して切り出すやり方もしていました。
ガシャーン。ちなみに、これちょっとうるさいです。工事現場の地面を均すマシンの半分くらいかな?
裁断完了です! そこそこの厚みがある革ですが、ばっちり切り出せていますね。
縫製
仕様書にそって担当の方がミシンで縫っていきます。先ほどの裁断されたパーツを組み立てていくわけですね。
こう組み合わさると、アッパーの見た目が分かってきましたね。
ちなみに同社では縫製が終わったアッパーに木型がくっ付いた(吊り込みも済んでいる)状態で納品されるタイプもあるようです。
外国で生産してもらって、技術が必要な部分を自社工場で対応するわけです。
吊り込み
まずは吊り込みです。
アッパーを温めて木型に馴染みやすくします。
つま先を噛ませて、手前に軽く押し込み形成しているようでした。
ここからは職人さんが靴中央をしっかり見極めて、機械を操っていきます。
木型に革のかたちを合わせるため、上下左右から圧をかけます。この間、本当にあっという間。
その後はワニという工具を使った手作業で形成していきます。
底付け
ここからは製法によって、作業内容が変わります。
セメント製法はアッパーの接合部分を機械で削ったりゴム底に薬品(プライマーという)を塗って起毛させてから、糊付け、圧着させます。
このように人の目でソールの状態をチェック。
木型にはめたアッパーの床を削り、ゴム底をプライマー処理して、この後ガッチャンコします。
これは仕上げ途中のものですが、アッパーとソールがくっ付いていますね。お馴染みの革靴の姿になりました。
・・・
一方、グッドイヤーウェルト、マッケイ製法(縫い付けが必要)の工程も見せていただきました。
既に溝を作っておいたソールにガシガシと糸を打ち込みます。
サクサクと両足終わらせていました。「流れるように涼しげにやっておりますが、この工場でこれができる人って何人いらっしゃるんですか?」と聞いたところ、
(自分含め)二人……?
と返ってきました。あなたは絶対風邪ひかないでください。
・・・
ちなみに、私がオーダーした革靴はマッケイとグッドイヤーウェルトの良いとこどりをした「ブラックラピド製法」というもの。
出し縫いができる別の機械に移り、その様子も拝見しました。
うわーめっちゃ細かいピッチ。きれいすぎる。そして、このヒダヒダの部分を折り返すことでヒデゥンチャネル仕上げ(溝隠し)になるんですね。
仕上げ:職人による染色を見てきた
そして最後は仕上げの「染色」です。マドラスは革の染色に強みのあるメーカーさん、もうドッキドキです。
あ、銀座店で見た私の靴!!!! 見てください、超丁寧にマスキングされています。職人さんが色の見本を見ながら丁寧に塗っていきます。
始まるぞ、始まるぞ
まずは手元の紙で試すんですね。
あああ輪郭を攻めて!
おおおおスポンジで円を描くように広げる!!!
てかシャカシャカ進み早すぎワロタ、カメラ間に合わない
待て待て待て どんどん色が変わっていく!!!
ここでスポンジにまた塗料を含ませて…
ああああああああああああああああああああああああああああああ
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
うおああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
うおおおおおおおおおおおおおおおお pic.twitter.com/UUsARO0i7G
— こひ先生 @革靴伝道師 (@k_leather_lover) 2019年3月15日
生きてて良かった
マジで
最後に:職人技が満載の革靴を体験しよう
大変失礼しました。私、本当に興奮しすぎて、言葉を失いました。
今回はマドラスの工場見学にて、革靴の製造工程を勉強しました。
吊り込みであろうと縫い付けであろうと、仕上げであろうと、職人さん一人一人が時間を掛けて身に着けた技術無しでは成り立ちません。
・・・
皆さんは革靴の値段は高いと思いますか?
足に合う、かっこいいと思う革靴に、どれほどお金を掛けられるのか。非常に難しい問題です。
ただ、今回ご紹介した「マドラスオーダーシューズシステム(MOSS)」、だいぶ生産コスト面で頑張ってますよ。
ぜひ、職人さんの技が詰まったこの一足を試して欲しいと思います。